カマイユ~再会で彩る、初恋

学校に戻って来た白杜達は、車から荷物を降ろす。

「矢吹先生、助かりました。ありがとうございました」
「いえ」
「矢吹先生の車、めちゃくちゃいい匂いがする~♪」
「おっ、マジだ!何これ、めっちゃいい香り!」
「そうか?……トランクの荷物降ろし終わったんなら、もう閉めるぞ」

何日か前に茜からお土産で貰った車載デュフューザー。
フランスの有名ブランドのもので、天然成分で出来ていて、乳幼児や妊婦でも安心して使えるものらしい。

トランクや後部座席から荷物を降ろし、校舎内へ運ぶ生徒たち。
教室から取りに来た生徒たちが吉永教諭の車の回りに集まり出した。

「矢吹せんせーいっ!!お電話で~~すっ!」
「あっ、はい!今行きます!!」

職員室から呼び出しがかかった。

「吉永先生、すみません。降ろし終わったら鍵かけて貰えますか?」
「はい、分かりました」

白杜は吉永教諭に車の鍵を渡し、職員室へと駆け出した。

**

文化祭が終わるとすぐに修学旅行があるため、毎日のように会議や打ち合わせがある。
時期的に来年度向けの推薦枠の入試も控えていて、教師の仕事は目まぐるしい。

受け持つクラスがなくてもここ数週間はほぼ毎日残業している。
とはいえ、公立高校ではないから、比較的退勤時間も早めだけれど。

「矢吹先生、今日はありがとうございました。こんなもので申し訳ないんですが…」
「……すみません、じゃあ遠慮なく頂きます」

机上を片付け帰り支度をしていると、吉永教諭が缶珈琲を差し出して来た。
それを受け取り、鞄に入れると。

「矢吹先生の婚約者の話って、架空でしたよね?」
「……え?」

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