カマイユ~再会で彩る、初恋
公立高校と違い、職員の異動自体は比較的に少ない。
一身上の都合等がなければ、ずーっと同じ教壇に立ち続けられる。
それだけ、新顔の先生が少ないということだ。
世界的にも有名な彫刻家の息子としても周知されていて、学校側からの配慮もあり、個人的な情報はあまり介入しない校風なのだが……。
白杜の場合、生徒との関係性に揺るぎない一線を引くことで有名で、それは教師間でも暗黙の了解のようなものになっている。
人間関係の構築があまり得意でない白杜は、プライベートなことは一切公開して来ていない。
幾ら同僚だといっても、深い友人関係を築こうとしたことなど一度もない。
教師だって人間だ。
仕事ではない、プライベートな時間にまで注意を受けたり干渉されたりするのは、耐え難い苦痛だからだ。
元々、教職に就きたかったわけじゃない。
画家として好きなだけ絵を描いていたかった。
けれど、今は亡き祖母の勧めもあって教員免許を取得し、教師をしながら絵を描いている。
吉永教諭の突然の言葉に、思わず視線が絡まった。
「校長先生から話を伺ってまして、……確か、生徒に対するカモフラージュでご婚約されてるとか?」
「……それが、何か?」
「いえ、ちょっと気になりまして」
この手の話題はよくある。
若い女性教諭が採用されると、恋愛目的で近づいて来る人も結構いる。
母親の実家が結構大きな会社を経営していたこともあり、母親が通学していた頃から毎年のように多くの寄付金をしている。
それがあるため、この学校で教師をしているようなものだ。
だから、箝口令のようなものが暗黙の了解として周知されている。
「個人的なことに関しては、何もお答えできません」