カマイユ~再会で彩る、初恋
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十時台のシンガポール行きに乗務しているため恋人と会えない白杜は、二週間ぶりに祥平の店に顔を出す。
「いつものビールと何か腹に溜まるもん見繕って」
「おっ、……今日は機嫌悪いな。彼女と喧嘩でもしたか?」
「別に」
長野旅行の翌週に祥平への土産を渡しにバーへは顔を出している。
茜との関係も良好で、そっち方面に関しては愚痴ることもない。
「ん」
お気に入りのフラーズビールが目の前に置かれ、空きっ腹に流し込む。
「去年採用された同僚がさ、俺の婚約者のこと聞いて来たんだよ」
「あぁ~、そっちの話か」
祥平の店に通う理由なんて、殆どこの話題だった。
最近では恋愛の愚痴相談で通ってたから、思い出したように溜息を吐いた。
「白杜は今の彼女と結婚する気あんの?」
「……」
「その気があるなら、さっきの話題を更新するのにリアルを被せたらいいだけなんじゃねーの?」
「……リアルねぇ」
「俺からしたら、お前が誰かに関心寄せてるってだけでも大問題ってぐらい凄いことだぞ」
「……」
確かに誰にも縛られず、自由博愛主義者のように。
誰かに心を惑わされる存在が疎ましくて、常に一定の距離感を大事にして来た。
そんな俺が、十年前も今も同じ人物に心を揺さぶり倒されている。
「まだ三か月だよ」
「だから?」
「早すぎないか?」
「そーか?別にいんじゃね?時間の問題じゃなくて、濃度の問題だろ」
「……濃度、ねぇ」
何も描かれていない真っ新なキャンバスに淡い色が乗り、少しずつそれを成長させるように色付けしてるつもりだけれど。
実際、絵なんて終わりどころが微妙なのは否めない。
自身が満足した時がその時だけど……。
十時台のシンガポール行きに乗務しているため恋人と会えない白杜は、二週間ぶりに祥平の店に顔を出す。
「いつものビールと何か腹に溜まるもん見繕って」
「おっ、……今日は機嫌悪いな。彼女と喧嘩でもしたか?」
「別に」
長野旅行の翌週に祥平への土産を渡しにバーへは顔を出している。
茜との関係も良好で、そっち方面に関しては愚痴ることもない。
「ん」
お気に入りのフラーズビールが目の前に置かれ、空きっ腹に流し込む。
「去年採用された同僚がさ、俺の婚約者のこと聞いて来たんだよ」
「あぁ~、そっちの話か」
祥平の店に通う理由なんて、殆どこの話題だった。
最近では恋愛の愚痴相談で通ってたから、思い出したように溜息を吐いた。
「白杜は今の彼女と結婚する気あんの?」
「……」
「その気があるなら、さっきの話題を更新するのにリアルを被せたらいいだけなんじゃねーの?」
「……リアルねぇ」
「俺からしたら、お前が誰かに関心寄せてるってだけでも大問題ってぐらい凄いことだぞ」
「……」
確かに誰にも縛られず、自由博愛主義者のように。
誰かに心を惑わされる存在が疎ましくて、常に一定の距離感を大事にして来た。
そんな俺が、十年前も今も同じ人物に心を揺さぶり倒されている。
「まだ三か月だよ」
「だから?」
「早すぎないか?」
「そーか?別にいんじゃね?時間の問題じゃなくて、濃度の問題だろ」
「……濃度、ねぇ」
何も描かれていない真っ新なキャンバスに淡い色が乗り、少しずつそれを成長させるように色付けしてるつもりだけれど。
実際、絵なんて終わりどころが微妙なのは否めない。
自身が満足した時がその時だけど……。