カマイユ~再会で彩る、初恋

「結婚はゴールじゃないから。人生の通過点で、幾千もの別の道を歩いて来て、奇跡的にその先の道が同じ人を見つけられたってことじゃね?」
「……」
「だからさ、時間の問題じゃなくてタイミングの問題ってこと。そのタイミングを逃したら、また別の道に進んでしまうかもしれないだろ」

祥平の言葉に雷に打たれたような気がした。

よくある恋愛あるあるで、頭では分かっていることなのに。
第三者に言われるとやっぱり実感する。
我が身に降りかかって気づくというやつだ。

「酒でも料理の味付けでもさ、濃すぎるってのは体に毒だろ。……絵も一緒だろ。やたらめったら濃く塗りたくっても逆に絵が死ぬもんなんじゃね?」
「……確かに」
「恋愛も一緒だよ。生きるって結局はそこに辿り着くように出来てんだわ」
「お前、達観してんな」
「この仕事してるとさ、様々な悩み抱えてる人の話聞くけど、ストレスも溜めすぎると毒だし。辛い時は周りが見えなくなってるけど、すっげぇ大きなスケールで考えたら、どれも一緒に見えてくるよ」

メニューにないまかない料理のようなナポリタンを手際よく作ってくれた祥平。
それを口にしながら、思い知らされる。
同じ歳なのに、人生の経験値が違い過ぎることに。

「っつーかさ、俺から言わして貰うと、何でお前そんな暢気なの?」
「は?」
「いやだって、CAってだけでもよりどりみどりのような環境な上、あの顔、あの容姿だぞ?ぜってぇ、今まで誰かに求婚されててもおかしかねーし、今だってどこの馬の骨か分からない野郎に掻っ攫われてもおかしかねーぞ」
「っ……」

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