カマイユ~再会で彩る、初恋
祥平には長野旅行の時の写メを見せてある。
ずっと連れて来いと言われ続けてたのもあって、彼女の了承も得た上で見せた。
「今まで彼氏が一人もいなかったわけじゃないんだろ?」
「……ん」
「じゃあ、そういう付き合いをしててもおかしくねーな」
祥平に言われてハッとする。
『暫く彼氏はいなかった』と言ってたが、俺の『暫く』と彼女の『暫く』は同じじゃないかもしれない。
いや、確実に違うはず。
踏み込んだ話はあえて避けて来たけれど、当然祥平の言うような交際をしててもおかしくない。
俺の知らない誰かと、結婚を考えたことがあるかもしれない。
もしかしたら、そんな付き合いをしていて別れたかもしれないし。
考えれば考えるほど焦る自分がいる。
「急ぐ必要はないけどさ、その気があるならちゃんと捕まえとけよ。今の関係性なんて、所詮口約束みたいなもんだから。『別れたい』の一言で、オールリセットにされんだかんな」
「……ん」
恩師と教え子という関係性を恋人という形で上書きしたから安心しきっていた。
けれど、傍から見れば単なる恋人だということ。
「あっ、そうだ、言い忘れてた。美沙が妊娠した」
「え、……あっ、おめでとう」
「おぅ」
「祥平が父親になんのか…」
「お前、馬鹿にしてんだろ」
「してねーよ。……予定日いつ?」
「来年のGW」
「GWかぁ。……欲しいもんあったら遠慮なく言えよ」
「美沙に聞いとく」
いつもは俺の愚痴ばかり聞いている祥平から、久しぶりに良い話が聞けた。
結婚するまではたらし事情ばかり聞かされ、結婚してから惚気ばかりだったのに。