カマイユ~再会で彩る、初恋


一週間ぶりに先生の家にお邪魔し、夕食もお風呂も済ませてリビングでリラックスムードになった、その時。
突然先生の口から思わぬ質問が飛び出して来た。

『茜って、今まで何人くらいと付き合ったの?』

今まで一度も踏み込んだ質問をして来なかった先生が、完全なる包囲網で仕掛けて来た。
別に隠さないとならないような事をしてきたわけじゃない。
ただ、先生はそういうことは気にしないかと思っていたから、少し戸惑ってしまう。

「言いたくない?」
「あ、……いえ、大した恋愛して来たわけじゃないですよ?」
「……ん」

長い脚を組んでソファの背凭れに体を預けた先生は、手にしている缶ビールに口を付けた。

「一日限りの彼氏というのもカウントしていいなら五人ですかね」
「一日限り?」
「はい。中等部の時に、親の仕事の関係で夏休みに転校した男の子がいるんですけど、引っ越す少し前に告白されて、引っ越す前日の土曜日に一日だけ彼女としてデートして欲しいって言われたんです」
「ん」
「元々佑人と同じ小学校だった子で、佑人の紹介もあって仲が良かったんですけど」
「それで、想い出つくりにデートしたの?」
「はい。当日は遊園地に行く予定だったんですけど、大雨になってしまって。結局は駅ビルの商業施設で買い物デートしたくらいです」
「可愛いな」

十五年も前のことを思い返しながら、たった一日……いや、数時間の彼女をした出来事を話した。

「二人目は?」
「……もしかして、全部聞こうとしてます?」
「ダメなのか?」
「……ダメじゃないですけど、先生の昔の彼女さんのことも聞きますよ?」
「ん、いいよ」

……いいんだ。
自分で言っておきながら、ちょっと聞きたくない気もする。

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