カマイユ~再会で彩る、初恋
そんなこと、考えもしなかった。
持ち主が不在の家に、勝手に上がり込むだなんてそんな概念私には無い。
「いつでも来ていいっていうのが合鍵でしょ」
千奈が言うように、先生の家に行ったら先生ロスが解消されるかもしれないけれど。
不法侵入みたいで後ろめたさが……。
先生に断りを入れたらいいのかな。
それなら、不法侵入にはならないよね?
「先生にメールで話してみる」
「はっ?ちょっと茜、……秘密だからスリル感があるんじゃない」
「……スリル感?」
「浮気してるかもしれないし、自分が知らない期間の先生を垣間見るのが、合鍵の特権でしょ」
「……朔也さんの家に、そんな風にお邪魔してたの?」
「朔くんの?朔くんは逆。不在の時に使ってくれてると萌える~とか言って、部屋から写メちょーだいとか言うタイプだから」
「あ~そうだった。……朔也さんは盲目の溺愛彼氏だったね」
『重い』という言葉がマッチするくらい、朔也さんの愛は濃厚だ。
早々に別れるかと思ったけれど、寂しがり屋の千奈にはちょうど良かったらしい。
隆が朔也さんみたいにガンガンアピールして、甘い言葉を浴びせるように伝えていたら、たぶん違う今になってたはず。
空想を押し嵌めても無駄なんだろうけど。
朔也さんが嫌いだとか苦手だとか、そういうのじゃないんだけど。
ずっと昔から知ってる隆が、未だにちょっと可哀そうに思えて。
……と同時に、自分が佑人にしたことへの罪悪感をダブらせてしまう。
「あっ、そうだ!……うちのお母さんがね、茜にって」
「サマーニット?」
「うん」