カマイユ~再会で彩る、初恋

編み物教室をしている千奈の母親が、年に数回編んだものをプレゼントしてくれる。
少し気の早いサマーニット。
オフホワイトで肌触りがとてもいい。

「千奈ママによろしく言って~♪」
「この間のフランス土産のお返しだって」
「あー、あれね」

少し前にフランス便に乗務した時に、愛用しているブランドの本店限定の香水をお土産に買った。
CAをしていると、しょっちゅう海外に行く機会があるから、こういうメリットがあるのが嬉しい。

「お泊りして来なよ」
「……いいのかな」
「そんなことで怒るような人じゃないでしょ」
「まぁ、そうだけど」
「クローゼットの中、こっそり覗いたりさ」
「え?」
「昔の彼女の写真とか持ってるかもよ?」
「……」
「子供の頃の写真とかは?」
「……見てみたいけど」
「あとはさ、パソコンの閲覧履歴とか!」
「さすがにそれは」

千奈は楽しそうに話す。
朔也さんはこれ系の浮気調査は全然ウェルカムらしい。
というより、完全にシロだから自信があるのだろうけど。

先生の昔の彼女。
どんな人なのか、気にはなるけど。
先生は遊びでしか、付き合ったことがないと言っていた。
だから、写真なんて無い気がするけれど。

「何かを探るとかじゃなくてもさ、サプライズ的なことでもいいんじゃない?」
「サプライズ?」
「うん。ちょっとした置き手紙みたいなメモを置いて来るだけでも。久しぶりに帰宅したら、彼女が来た形跡があったら、嬉しいと思うけど」
「……そういうもの?」
「家の中に勝手に入って欲しくないなら、合鍵なんて渡さないよ」

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