カマイユ~再会で彩る、初恋
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十七時少し前に千奈が帰り、急に静かになったリビングで呆然とキャンバス画を見つめる。
……行ってみようかな。

着替えやメイク道具は一通り置いてあるし、食糧と仕事に使うものを持参したら、二連休だから今晩と明日お泊りして、明後日は先生の家から出勤すればいいよね。
物凄く贅沢かも。

先生、ごめんなさい。
あまりにも先生ロスなので、充電させて下さいね。
心の中で先生に謝罪しながら、荷物を纏める。

「途中で食糧買えばいいもんね。あっ、先生用のビール買って冷蔵庫に補充しとこかな♪」

ネットで買っておいたカールアイロン(先生の家置き用)と普段使いのサンダル一足を紙手提げに入れる。
コンビニにフラッと買い物に行く時にヒールで行くのがちょっと面倒で、いつも先生のサンダルを借りていたから準備しておいた。
二カ月ぶりの先生宅訪問に、遠足を楽しみにしてる子供みたいにテンションが上がる。
ほんのちょっぴりの罪悪感も滲ませながら。



途中で買い物を済ませて、先生のマンションに到着した。
顔見知ったコンシェルジュの男性に会釈しながらエントランスを通り過ぎ、エレベーターで上層階へと。

先生から貰った鍵がないと、お宅があるフロアへは入れない。
しかも、幾つかある物件全てが先生のものだというのだから、異空間へと移動する乗り物だと思えてくる。

エレベーターが停止し、降り立つと静寂に包まれた。
緊張する。
物凄く悪いことをしているみたいで、鼓動が途端に暴れ出す。

暗証番号を入力してドアロックを解除し、重厚なドアをゆっくりと手前に引いた。

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