カマイユ~再会で彩る、初恋
「うわっ……先生のおうちの匂いだ」
ベルガモットとレモンが香り立つ高級フレグランスの匂いに、微かに絵具や画材の匂いが溶け込んでる先生宅の匂い。
スンスンと鼻を鳴らしてから、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
「幸せぇ~~」
ちょっと変態にでもなったかのような気分にクスっと笑いが零れた。
自宅から持って来たサンダルをシューズクローゼットにしまって、部屋の奥へと。
リビングの壁にあるスイッチを押し、電動シェードがゆっくりと持ち上がる。
既に十九時を過ぎていて、レース越しでも夜景の煌めきが視界いっぱいに広がる。
あえて照明は間接照明だけにして、夜景を堪能する。
「贅沢するぎよね」
いつみてもプライスレスだということが夢のようで。
何度も見ているのに、未だに慣れない。
来る途中にファストフード店で夕食を済ませて来たから、あとはお風呂に入って寝るだけ。
十九時を過ぎたばかりで、一人きりだと時間が有り余ってしまう。
*
先生と買い物デートした時に買って貰った入浴剤を忍ばせた湯船に浸かり、先生とのデートを思い出す。
「今頃先生、何してるだろう」
何日か前に送られて来たメールには、街中にあるオブジェみたいな彫刻とかお洒落なカフェの写真が添付してあった。
先生の瞳に映ったものと同じものを見れる喜びに浸れて、遠く離れているのに嬉しくなる。
お風呂から上がり、夜景を楽しみながら買って来た期間限定の発泡酒をグラス二つに注ぐ。
一人で飲むお酒は味気ない。
彼氏がいなかった時はこれが当たり前だったのに、恋人ができた途端、虚しさを覚えてしまった。
「先生、カンパーイ」
隣りに先生の姿を思い浮かべながら、初夏の夜にのまれてゆく……。