カマイユ~再会で彩る、初恋


シャワーを浴びて、一息つく。

気持ちよさそうに寝ている彼女を見下ろし、何とも言えない感情に駆られた。

目が覚めたら、強姦魔だと(なじ)られるだろうか。
変態だと罵倒されても構わない。

朝が来れば、もうこんな風に間近で見ることは出来なくなるのだろうから。

ずっと見て見ぬふりしていた感情がわき起こる。
『教え子』だからと、押し殺して閉じ込めて。
十年前に封印したはずの感情が蘇って来る。

「今だけ……」

もう二度と触れることはないと思ってたのに。
触れてしまえば溢れ出す感情を鎮める方法なんて知らなくて。
十年前にどうやって封印したのかさえ、思い出せない。

静かにベッドに横たわり、規律よく寝息を立てている彼女を抱き寄せた。

触れる全てが柔らかくて、細すぎるほど肩が小さい。
折れてしまうんじゃないかと思うほどに華奢な腰も。

今という時間が永遠に続けばいいのに。

艶々とした髪。
くるんと巻かれた睫毛。
ぷっくりとした唇。

ずっとずっと触れたかったそれらが、今は自分の腕の中にある。

目覚めないように呼吸音に合わせるようにそっと頭を撫でる。

「これ、取ったら起きるか……?」

左側にハーフアップされた髪をゆっくりと解く。
サラサラの髪質のようで、重力に従うようにサラッと流れた。

左手薬指に指輪は嵌めてないし、していた形跡もない。
結婚していてもおかしくないが、誰のものにもなっていて欲しくないと思ってしまう。

『ぅとっ、……かえ…ろッ?』
そういえば、誰かと勘違いしてたな。
恐らく、渡瀬 佑人だろう。
中学部から一緒で、いつも一緒にいるのを毎日のように見ていた。

それでも、毎日のように俺の元に来てくれている間は、一瞬でも優越感に浸れたんだ。

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