カマイユ~再会で彩る、初恋
「いえいえっ、これ洗い終わったら帰りますっ!!」
「別に飲むくらいの時間はあるだろ。ってか、それ洗ってる間に作れるから」
シンクに使い終わった調理器具を指差す先生。
断わったのに……。
心の片隅で嬉しくなる私がいる。
「あ、そうだ」
「ん?」
リビングへと向かって行った先生が何かを手にして戻って来た。
「これ、ビンゴの景品を野上だっけ?アナウンサーの子、あの子に押し付けられた」
「あぁ~、野上 静香ちゃん」
昔からちょっと強引な性格の子だ。
赤い紙袋から取り出した透明容器には、白いものが入っていた。
「……マシュマロ?」
「ん」
冷蔵庫から牛乳を取り出した先生は、それを小鍋に入れた。
そして、先程の容器からマシュマロも取り出し、それも入れた。
「美味しいんですか?」
「砂糖とゼラチンだから、とろっとした甘みになって旨いよ」
「へぇ~、先生、物知りですね」
「いや、……たぶん」
「……え?」
マシュマロを焼いて食べたり、ビスケットに乗せてチンしたりして食べたりするから、美味しいに間違いないだろうけど。
何だろう。
先生の、ちょっとした悪戯心のような子供っぽい素振りに笑みが零れた。
調理器具は結構使い込まれていて、ちょっぴりズキンと胸が痛む。
奥様なのか、恋人なのか。
先生ご自身で使い込んでいてくれたらいいなぁだなんて、勝手に思い込む。
シンク周りの水気を払っていると。
「もうそれくらいでいいぞ」
「……はい」
仄かに甘い香りのするカップが無言で差し出された。
「じゃあ、遠慮なく戴きます」
「どうぞ」
リビングソファへと向かう先生を追い、その背中に視線が釘付けになる。