カマイユ~再会で彩る、初恋


「先生っ……、本当に大丈夫ですから」
「だから、何度も言ってるように、買い物のついでなんだから、気にするな」
「うぅっ……」

先生のご自宅を後にし、エレベーターで一階へと降り立った。
有無を言わさず腕を掴まれ歩かされている。
マンション脇の駐車場へと辿り着くと、ピッとスマートキーのアンサーバック音が鳴った。

「乗って」

車のキーだけでなく、先生の行動もスマートすぎる。
助手席のドアを開けた先生は、ほんの少し小首を傾げて促して来た。

その顔をクイっとするのは反則です。
ご自分の顔面偏差値ご存知ないんですか?
十年経っても美しすぎるその美顔に、昨夜も沢山の女の子たちがメロメロだったじゃないですか。

「……すみません」

致し方なく、助手席に乗り込んだ。
本革シートに、ブラックとウッド調のツートンカラーの内装デザインはお洒落で、インパネはもちろん学習機能つきデジタルパネル。
高級外車のSUVの右ハンドル車は、運転免許のない茜でも超高級車だというのは、見て分かる。

「どこら辺?」
「……品川駅に程近いです」
「了解」

シートベルトを締めた彼は、スムーズに車を発進させた。

どうやってこのご恩をお返ししよう。
タクシー代にクリーニング代と宿泊費用と飲食代を足して、シャワー代や歯磨きセットとその他諸々。
それらに介抱代を上乗せしてお金を渡そうとしたら、速攻でお財布を取り上げられた。
“車で送り届けたら返す”と言って返してくれない。
きっと、お金も受け取らないだろう。

「先生」
「……ん?」
「何か、お返ししたいんですけど、何がいいですか?」

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