カマイユ~再会で彩る、初恋
先生のマンションから車で十五分ほどの距離。
日曜の昼近いということもあって、品川駅周辺は結構渋滞している。
ハザードランプを点灯させ、漸くお財布が返された。
「お返しは要らないよ」
「それじゃあ、私の気が済まないんです!せめて、タクシー代と宿泊代くらい取って下さい」
一万円札を財布から抜き取り、それを差し出すと。
「じゃあ、連絡先教えて?」
「……え?」
「今度、メシか酒でも奢ってくれればいいから」
「………あっ、はい!!」
バッグからスマホを取り出すと、物凄い量の着信とメールが……。
普段からサイレントにしていることが多いから、気付かなかった。
千奈と佑人から何件も入っている。
「えっと、……電話番号ですか?それともLINEとか?」
「……じゃあ、LINEで」
「はい」
自分のQRコードを表示させ、それを先生に差し出す。
「ん、サンキュ」
素早く読み取った先生が、すぐさま何かを送って来た。
“白杜”と登録しているようで、メッセージが送られて来た。
『また今度な』
たった五文字なのに、胸がきゅんとしてしまった。
「五十嵐、悪い。後ろつかえてる」
「あっ、はい!先生、本当にありがとうございました!」
「気を付けて帰れよ」
ドア越しに片手を上げた先生。
彼氏との別れ際みたいで、ちょっぴり切なく感じる。
先生の車が見えなくなるまで見送った。
*
『先生、本当に何から何までありがとうございました。行きたいお店が見つかったら、遠慮なくご連絡下さい』
帰宅して三十分ほど悩んで、結局無難に社交辞令的な文章にした。
送信ボタンを押すのにも勇気が要ったけれど、返信を待つのにも相当な勇気が要る。
送信ボタンを押してから、数分後。
『次の日が休日の時とか、十八時以降空いてる日があったら、教えて』
これは、本当にありえない事態になってるんじゃないだろうか???