カマイユ~再会で彩る、初恋


小一時間ほど千奈と会話して、その後に佑人に返信した。
すると、ものの十分ほどで自宅のインターホンが鳴った。

「いらっしゃっ……」

モニターに佑人の姿を捉え玄関ドアを開けると、無言で抱き締められた。

「……佑人?」
「一晩中連絡が取れなくて心配したんだからなっ。……どこにいたんだよッ」
「ごめんね?……たまたま職場の後輩に行き会って。高坂(こうさか)くん達に騙されてお酒飲ませられちゃって、酔い潰れた私を介抱して貰ったの」
「……そうだったんだ」
「うん、心配かけてごめんね?」
「いや、俺も無理やり他の部屋に付き合わされたりとか、結構飲まされたから付いててあげれなかったし、……ごめんな」

こんな風に取り乱した佑人は初めてかもしれない。

「とりあえず、上がる?」
「ん。茜の好きなサクランボ買って来た」
「えっ、ホント?!」

自宅に佑人を上げる。
時季ものの佐藤錦を二パック買って来てくれた佑人は、手慣れた手付きでザルを取り出し、サクランボを水洗いする。

千奈に言われて、先生との事は伏せることにした。
少なからず佑人が私に好意を抱いてくれているのは何となく分かっているから、彼を傷付けないようにという千奈の言葉に従った形。

「茜の夏休みって何連休?」
「夏休み?……たぶん四連?だったかな。でも、お盆からずれると思うけど」
「それは分かってる」

既に七月に突入していて、サマーキャンペーン中のASJ。
七月・八月は繁忙期で、運航する便も割増しされる。

「俺、有給結構残ってるから、今年は海にでも行かないか?」
「海?」
「ん」
「千奈と隆も一緒に?」
「………ん」

今の間は何だろう。
もしかして、二人で行きたいのかな……。

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