カマイユ~再会で彩る、初恋
(回想)

高校二年の春、初めてあの人(先生)に会った。
担当教科は英語と美術。
二年生は受け持ちではなかったため、直接授業を受けることは無かった。

都内でも有数の中高一貫の私立校の高等部。
偏差値六十五という、有名進学校だ。

彼は当時、大学院を卒業してすぐに教職に就いたこともあって、若々しくて見た目もハンサムで、すぐに大人気になった。
口数は少なく、一見冷たそうな表情が返って乙女心を擽るのか。
常に周りには女子生徒が取り囲んでいて、話しかけるのもかなりハードルがあった。

そんな中、毎年恒例で行われる英語弁論大会があり、学年代表になった私は、連日職員室で練習していた。

「聴き心地のいいネイティブ発音だな」
「あ、ありがとう……ございます」

初めて会話した日のことを今でも鮮明に覚えている。

外交官をしている父の影響で、物心つく頃にはイギリスやオーストラリアに住んでいて、英語をシャワーのように浴びて育ったからだ。
英語が得意というより、日常会話で使っているから苦手という意識がなかった。
自分が日本人だと初めて意識したのも、彼に言われて初めて気付いたほどだ。

弁論大会の担当教諭ではなく、たまたま職員室にいた私の傍を通っただけ。
その一瞬の出来事だったのに、凄く嬉しくて心が弾んだ。

あの日から毎日、先生を目で追った。

翌春、担任だと知った始業式の日。
これは運命なんじゃないかと、勝手に思い込むくらい気になっていて。
『大好き』だと、自覚するのに時間はかからなかった。

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