カマイユ~再会で彩る、初恋


五十嵐と連絡先を交換して、二週間が経過した。
あの日以来、連絡が一度もない。

無理やり自宅に連れ込んで、服を脱がせて抱き締めて。
衝動を抑えきれず、行動に移してしまったことは後悔してももう遅いか。

「まだ連絡来ないのか?」
「……ん~」

仕事終わりに親友の倉木(くらき) 祥平(しょうへい)(三十五歳)が経営するバーに立ち寄っている。

教職に就いて、ちょっとストレス発散したくて立ち寄ったバーで祥平と出会った。
父親が経営しているバーだったが、幾つも持っているらしくて。
そのうちの一つであるここを譲り受けたのだとか。

祥平はミステリアスな風貌で、顎ひげが特徴の美形。
目や鼻といった顔のパーツが絶妙な位置に収まっていて、祥平をモデルにしたら結構いい画が描けそうだが、今まで描いたことは一度もない。

話し上手なうえ、聞き上手。
商売がら当たり前なのかもしれないが、人との壁を作っている俺の心にストンと入り込んだ唯一の男だ。

「そんなにモヤってんなら、白杜からすればいいだろ」
「……それはできない」
「何で?……教え子だから?」
「……ん」
「だったら、何で家に泊めたんだよ」
「何でって……」

あの時は他に選択肢がなかったから。
いや、違うか。
一次会があったホテルが歩いて数分の距離にあったんだから、ホテルに戻ることもできたはず。
タクシーに乗せた時点で、近場のホテルに寄ることもできた。
それをしなかったのは、俺の中にある感情がそうさせたんだろうけど。

「もう答えは出てるんじゃねーの?」
「………」

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