カマイユ~再会で彩る、初恋
横浜の郊外にある隠れ家的レストラン。
創作料理だが、四つ星ホテルで三十年腕を揮ったシェフが経営するお店で、芸能人がお忍びで来るという人気店。
祥平の父親がシェフと友人らしく、幼い頃から親交があり、デートにお薦めだと。
「凄いお洒落なお店ですね」
「友人の行きつけらしくて、味は確からしい」
個室に通され、直ぐに料理が運ばれて来た。
料理はどれも絶品で、五十嵐も終始笑顔で口にしている。
「贅沢すぎますね」
「……だな。ワインとか飲みたいなら飲んでいいぞ?ちゃんと送ってくし」
「いえ、今日は控えます。この間の二の舞にはなりたくないので」
「ハハッ、そうだな」
あの時は俺もマジで困ったけれど。
正直言って、酔ってる五十嵐は可愛かった。
「先生って、お酒強いんですか?」
「ん~、結構飲める口だと思うけど」
「そうなんですね」
「五十嵐は弱そうだな」
「仕事上、飲酒乗務は出来ないので、飲んでも量は多く飲めないです。連休の初日とかなら別ですけど」
「あ~なるほどな」
美味しそうに海老のアヒージョを口に運ぶ姿をじっと見つめていると。
「先生って、睫毛長いですよね」
「は?」
「鼻も高いし、口元のほくろは色気があるし。今も女子高生にモテモテでしょ」
「……ガキには興味ない」
「フフフッ、その目、懐かしいです。そういう冷ややかな視線を突き刺してましたよね~」
「……五十嵐には向けてなかっただろ」
「へ?…………っ」
今もあの時も生徒は生徒でしかない。
どんなに好意を向けられても、応える気はさらさらない。
けれど、五十嵐だけは……。