カマイユ~再会で彩る、初恋


枇杷のシャーベットをデザートで頂き、レストランを後にした。

来た道を帰りながら、ほんの少しだけ車内の雰囲気に色がついたように思える。

『五十嵐には向けてなかっただろ』
何てことない言葉なのに、自意識過剰に反応してしまう。

金曜の夜というのもあって、横浜から都内へと向かう国道はかなり渋滞している。
先生と一分でも長くいられる状況に、嬉しくならないはずがない。

「あ、そうだ!……これ、一宿一飯の御礼です」
「え?」
「さっきのお金も私が出すつもりだったのに、いつの間にかお会計が済んでましたし。これは受け取って下さい」
「……中身、ネクタイ?」
「バレバレですよね?大きさといい形といい」
「……何だか、気を遣わせて悪いな」
「いえいえ、私の方が色々して貰ってるので」
「……じゃあ、遠慮なく」
「気に入って貰えるといいんですけど」

信号待ちの車内で、先生に御礼の品を手渡した。
数日前にイタリアにフライトで行った時に現地で買ったもの。
先生がそれをつけて、教壇に立つ姿を想像するのが凄く楽しかった。

婚約者はいなくて、彼女もいなかったと言っていた。
今現在いるのかは分からないけれど、こうして食事に誘われてる時点でいないと思いたい。

いてもおかしくないというより、いない方がおかしいと思えるくらいカッコいい先生だから。
もしかしたら、食事に誘うくらい何てことないのかもしれないけれど。
今は二人きりの時間を満喫したい。

「行きの車内での質問の答えなんだけど」
「……はい」

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