カマイユ~再会で彩る、初恋
指輪のことも踏まえて詳細を説明すると、千奈も合点がいったようで、『それって完全に告られてるじゃない』だなんて言う。
……本当にそんな風に捉えていいのだろうか?
『付き合おう』だとか、『好きだよ』だなんて言われたわけじゃない。
次のデートの約束らしい会話はあったけれど、正確には約束したわけでもないし、目に見える証拠が残っているわけじゃない。
だから、心のどこかで『遊ばれてる?』と一瞬脳裏を過る。
「佑人には黙ってなよ?」
「……ん」
「言わないと思うけど、隆にもだよ?」
「うん」
千奈は今の四人の関係性を壊したくないという。
私も同じ考えだ。
「あっ、朔くん帰って来た!茜ごめん、電話切るね~」
「うんっ!朔也さんによろしく言って~」
「はーい」
急な会議があったらしく、婚約者の朔也さんが二十二時を回って帰宅した。
先月から同棲し始め、プチ新婚生活もどきをスタートさせている。
朔也さんの溺愛が凄くて、千奈は本当に愛されている。
そんな千奈の恋バナを聞いて恋愛バロメーターは常に満タン状態だったが、これからは自力でバロメーターを充満させねば。
千奈との電話を終え、履歴を開く。
「先生に何て入れよう……」
今日のお礼メールを入れようと考えるが、適当な言葉が思いつかない。
簡潔に『ご馳走様でした。凄く楽しかったです』と送ればいいのかもしれないが、その文章ですら勇気が要る。
既読スルーされたら、どうしよう。
いや、そもそもブロックされてたら、どうしよう。
今日のは社交辞令的な会食で致し方なく……だったかもしれない。
先生のことになると、とことん後ろ向きな考えしか思いつかない自分が嫌になる。