カマイユ~再会で彩る、初恋


「えっ……何、これ」

毎日の筋トレ(プランクや腕立て伏せ等)を終え、ヨガマットの上で胡坐を掻いて水を口にしながら、スマホを開く。
メール受信を知らせるライトが点滅し、確認するために開いたのだ。

『今から会いに行ってもいい?さっき送り届けた場所で待ってる』という、先生からのメッセージ。
誰かと間違えて送ったのかもしれない。

けれど、僅かな期待が一瞬脳裏を掠めた。
『さっき送り届けた場所で』という言葉に。

明確な場所が記されているわけでもなく、固有名詞が記されているわけでもない。

『はい』と返信して『間違えた』と返って来ても悲しくなるし、『何時にですか?』だなんて、催促するみたいで送れない。
こういう時は、何て返したらいいのだろう。

千奈に相談するにも、きっと朔也さんと甘い時間を過ごしてるだろうし。
佳歩ちゃんは今日、フランス便のフライトが入っている。

スマホ画面を見つめ、数分固まってしまった。

「冗談でも夢でもいいや。……会えるかもしれないのに、ここでじっとしてるだなんてできないっ」

掻いた汗を流すために再びシャワーを浴びて、慌ててメイクを施す。
夜遅くとはいえ、さすがにノーメイクでは会えない。

Tシャツにフレアスカートを合わせて、自宅を飛び出した。

二十三時を回っていて外灯はあるものの、日中より人気が少ない。
自宅マンションから二つ交差点を渡って、お洒落なマンションの角を曲がったその先に、ハザードランプを点灯させた先生の車が停車していた。

「本当に来てるよっ……」

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