カマイユ~再会で彩る、初恋

思いもしない祥平の言葉に、唖然としてしまった。

「たぶん、普通なら癒しだとか安堵したくて結婚するもんなんだろうけどさ。俺の場合はその逆っつーか。アイツといると、すっげぇハラハラするし、ゾクゾクするんだわ」
「意味わかんね」
「純真無垢すぎるっつーか、心が乙女すぎるっつーか。男をあんま知らない分擦れてないから、これから幾らでもいい男が周りにわんさか集まって来るだろうし」
「……ん」
「そいつらを全部追っ払って、俺だけに夢中にさせるのには、どんだけ努力したらそうなるんだろう?って、すっげぇ考えた」
「……真顔で言うな」
「お前が聞いて来たんじゃん」

祥平の奥さん(美沙(みさ))は、今までちゃんと付き合った男がいなかったらしく、三十歳すぎても未経験だった女性。
遊び人の祥平にとったら、完全に恋愛対象外だったはず。
それが、付き合い始めて半年で結婚した。

「女遊びのスリル感とは少し違うんだけどさ、俺を生涯『男』として成長させてくれるんじゃないかと思ったからだよ」
「……男、ねぇ…」
「付き合うと安心を求めたがるし、結婚したら満足感を欲しがるもんだろ、女って」
「……」
「美沙はさ、俺に『死ぬまでドキドキしていたい』って言ったんだよ。そんな風に俺に直球で言う女は初めてだった」

ドキドキ……ねぇ。

祥平みたいにモテる男と付き合ってたら、いつでも不安でドキドキするだろうし。
甘い言葉も優しい仕草もできるから、そういう点においてもドキドキするだろうし。
経験が豊富だから、サプライズ的なこともきっと惜しげもなくするんだろうな。

「『好き』って伝えないと、やっぱダメか?」
「……態度で示せるなら、言わなくてもいんじゃね?まぁ、言ってあげれば、安心はさせられるだろうな」

< 54 / 177 >

この作品をシェア

pagetop