カマイユ~再会で彩る、初恋
祥平にはきちんと想いを伝えろと何度も言われている。
『伝えろ』と言われても、これまで何重にも鍵をかけて来た分、伝えるのにだって相当な覚悟と勇気が要る。
毎回会う前は、今日こそは……と気合を入れて臨むのに。
会うとどうしても思うように伝えられないし、態度で示せない。
いや、そうじゃない。
体は素直な反応を示してるのに、もう一歩のところで無用な理性が邪魔をするんだ。
ただ抱き締めたいのに。
ただ優しく触れたいのに。
それすらできずにこうして後悔ばかりが募る。
「白杜はさ、大事にし過ぎんだと思う」
「……」
「CAって言ったらさ、合コンじゃ高嶺の花的ポジションだろ。白杜が受け入れたくない気持ちは分かるけど、たぶんそれなりに遊んで来てるだろうし、男だって知ってると思うぞ」
「……そんなこと、言われなくたって分かってるよ」
「魔の手なんて、四方八方から伸びてるってことを頭に叩き込んどけ」
「……」
「ぐずぐずしてっと、マジで一瞬で掻っ攫われるからな」
「……ん」
祥平の言葉通り、俺は十年前の少女から大人の女性に成長しかけてるあの子の影をずっと追っている。
穢れを知らない純粋な乙女のようなあの子の姿を。
だから、自分で手折るのが怖かった。
祥平が言うように、もう誰かに手折られているかもしれないが、それを受け入れられずに目を背けてるのかもしれない。
「素面で無理なら、酒でも飲ませりゃいいだろ。っつーか、ここに連れてくりゃいいじゃん。俺が飲みやすいやつ作ってやるし」
祥平がニヤリと口角を持ち上げる。
大事にし過ぎても毒なのかもしれないな。