カマイユ~再会で彩る、初恋


「せんぱ~~いっ!!」
「んっ…」
「やっぱり、抱き心地最高っっっ!」
「ちょっとぉっ、変な言い方しないでよっ」

十日ぶりに佳歩ちゃんと同じシンガポール便のシフトになり、更衣室に入って来た彼女に抱きつかれた。
相変わらず、佳歩ちゃんの行動は予測不可能。
人目を憚らず、ほっぺにチューされたこともある。

好かれているのは悪い気しないが、どうも愛情表現がちょっと過激すぎる。

「イケメン教師と、その後進展ありました~?」
「……特にこれといってないかな」
「えぇ~っ?!お泊りとかお泊りとかお泊りとかないんですかぁ~?」
「……ないよ。ってか、何で『お泊り』限定なの?」

更衣室内には他にも数人のスタッフがいて、私達の以外は無言で着替えているから、必然的にうちらの声が響き渡る。

「何、……その目」
「そんな良いモノ持ってるのに、なんでかなぁ…」

佳歩ちゃんの視線が私の胸元にロックオンしている。

「先輩、もしかして、シンデレラ的な王道な恋愛を求めてます?」
「え?」
「可愛く思われたいとか、思ってません?」
「……ダメなの?」

恋愛においては佳歩ちゃんの方が何倍も先輩だ。
我欲全開の彼女は酸いも甘いも嚙み分けるほど、私とは経験値の差が歴然。
痛い恋も辛い恋もたくさんして来たと言っていた。
そんな彼女だからこそ、いつだって腹を割って話せるんだ。

「相手は鉄壁を隔ててる教師なんだから、自分から努力してその壁乗り越えるなりぶち破るなりしないと、何一つ変わらないですからね?」
「……そうだよね」

佳歩ちゃんに言われて改めて実感する。
自分だってもう子供じゃない。

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