カマイユ~再会で彩る、初恋
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羽田発シンガポール行 SJ6055(SJは全日本スカイジェット航空のコードシェア便)は定刻より五分ほど遅れて、シンガポールのチャンギ国際空港に到着した。
お客様が降機した後は、機内の忘れ物や不審物が残されていないか、隅々まで確認する。

「纏まめたゴミはR3(右側の前から三つ目のドア/機内食や機用品を搭載するためにフードローダーが装着されるドア)へ」
「はい」

茜はクルーに的確に指示を出す。

国際線のフライトだと一便で十袋以上のゴミが出る。
基本、グランドハンドリングスタッフが機内清掃をするが、海外の空港だと清掃スタッフが必ず沢山いるとは限らない。
次の運行に支障を来さないように、着陸後にCAが清掃することも少なくない。

直行便であるSJ6055便は、七時間十分のフライト。
今日はデブリーフィングをして、ホテルで一泊。
明日の午前発の便で羽田へと戻るスケジュール。



クルーのCAの子達と共にホテルにチェックインし、部屋で私服へと着替える。
すると、ジリリリリッと部屋のベルが鳴った。
ドアを開けると、白Tシャツにショートデニムの佳歩ちゃんがにこりと微笑んでいる。

「行けますか?」
「うん」

コンパクトなポシェットを斜め掛けにして部屋を後にする。
佳歩ちゃんと少し遅めの夕飯をとるため、ホテル内のストランへと向かった。

「好きなだけ注文して」
「本当に好きなだけ食べますよ?」
「フフッ、いいよ~好きなだけ食べて」

恋愛相談をする代わりに夕食を奢ることになっていて、シンガポールでは有名な松發肉骨茶(ソンファバクテー)で夕食を。
バクテーはローカルフードで、佳歩ちゃんの大好物。

「次は、いつ会う約束してるんですか?」

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