カマイユ~再会で彩る、初恋

千奈が私の分も進めてたくれたようで、所々の数字が倒されている。
千奈は雛壇へと向かって行った。

「茜、彼氏できた?」
「またそれ?……できないよ。ってか、今は仕事だけでいいの」

会う度に隆が聞いて来る。

隆は見た目可愛い感じの子犬系だが、実際は超肉食男子だ。
これまで付き合って来た女子は、数知れず。
遊びの子も入れたら、恐ろしい人数になるだろう。

嫌味で言ってるのではなく、これが素の彼だというのも分かっている。
だから、イラっと来るというより、いちいち返すのが面倒なくらいで大したことない。

「茜、デザート取って来てやろうか?」
「え?」
「食事はテーブルに運ばれて来るけど、飲み物はテーブルにある以外はスタッフに声かけて、デザートはあそこから食べたい分を取って来るシステムみたい」
「あっ、なるほどね」
「適当に取って来るから、食べてな」
「ありがとね、佑人」

ビンゴの紙を隆に預け、佑人はデザートが置かれている場所へと。

佑人は昔から優しい。
見た目はワイルドなのに、気遣い上手のイケメンさんだ。

「相変わらず、佑人は茜一筋だねぇ~」
「……はいはい」

景品を手にして戻って来た千奈に肩をポンと叩かれる。

「何貰ったの?」
「お米券にした」
「堅実だなぁ~」

えへへっと笑う千奈を横目に、まぐろのカルパッチョを口にした。

何となく分かっている。
佑人に好かれているんだろうなぁってことを。
他の女子には結構冷たくあしらったりするのに、私にはいつでも甘いから。
けれどこれまで、一度も告白されたことはない。

私が佑人と隆以外の男子に素っ気ない態度だからなのかもしれない。
人見知りする私は、人との距離を結構取るタイプだ。
本当に心を許した相手だけ親しくなるような、コミュ力低めだ。

< 6 / 177 >

この作品をシェア

pagetop