カマイユ~再会で彩る、初恋
「茜、……先生、あそこのテーブルだよ」
「……ん」
高校時代にずっと片想いしていたことも知っている千奈が、矢吹先生がいるテーブルを教えてくれた。
私がいるテーブルから少し斜め左に視線を向けた先にいる。
しかも、わざわざこの席を千奈が取っておいてくれたようで、同級生と同級生のちょうど間に先生がいて、視界が遮られていないことが何よりも嬉しかった。
十年ぶりに見た先生は相変わらずカッコよくて。
少し大人の雰囲気というか、男の色気が増したように見える。
「茜、見すぎっ」
プッと吹き出すように笑う千奈。
けれど、揶揄われたことよりも嬉しさの方が勝ってしまう。
「ちぃちゃん、ホントにありがとねっ」
「どーいたしましてぇ~」
外コン(外資系コンサルティング業界に勤務)の彼氏(秋名 朔也 三十三歳)がいる千奈は、先々月に婚約した。
今は結婚に向けて色々準備しているらしい。
朔也さんの友人を紹介して貰ったこともあるが、矢吹先生以上に心惹かれる人はいなかった。
「ビール以外なら、焼酎や日本酒、ワインとかあるけど頼むか?」
「ううん、いいよ、大丈夫」
佑人がプチケーキを数種類取って来てくれた。
ビンゴをしながらでも席移動していいらしく、沢山の女子が矢吹先生の周りを取り囲んでいる。
「渡瀬くん、ちょっと向こうで話さない?」
「……え?」
「ねぇ、いいでしょ~?せっかくだし、うちらのテーブルにも来てよ」
「萩原くんも一緒にどう?……ねっ?」
「佑人、せっかくだし、ちょっとくらいいいだろ」
「……ん」
隆は上機嫌に腰を上げ、佑人は溜息交じりに腰を上げた。