カマイユ~再会で彩る、初恋
**

「茜、ごめんね~?」
「そんな気にしなくて大丈夫だよ」
「でも……」
「もう、朔也さん、来てんじゃない?」
「……ん、たぶんね」
「待たせちゃ可哀そうだから、ほら早く行ってあげな」
「……ん、終わったらメール入れてね?」
「あーはいはい」

仕事帰りの彼氏が迎えに来たらしい。
お酒に弱い千奈が心配で堪らないのだろう。
本当に千奈にベタ惚れなんだよね。

心苦しそうに何度も振り返る千奈を追い払うように手を振る。

一次会が終わり、二次会のカラオケボックスへと向かう同級生たちがホテルのエントランスに集まっている。

「茜、二次会行くの?」
「どうしようか、悩み中」
「行くなら、俺も行くけど」

千奈を見送っている私に佑人が声をかけて来た。
佑人がいてくれたら、大丈夫かな。
まだ、先生を見足りないし……。

千奈が他の女子に聞き込みしてくれて、矢吹先生が二次会に参加する情報は仕入れてある。
千奈がいないから、参加するのを躊躇っていたけれど。
佑人がいるなら参加したいな。
今日だけだもん。
次は来れないかもしれないし。

「隆は?」
「アイツはもちろん参加でしょ」
「……だよね」

女の子大好きだもんね、隆は。
今日お持ち帰りできる子をきっと吟味しているはず。

「明日は休みだよな?」
「うん」

国際線乗務の翌日は、通常休日になる。

「じゃあ、行くか」
「そうだね」

**

脳内にガンガンと爆音が響き、視界がぐりんぐりんに揺れる状態で逃げ出すように部屋を出た。

「ぅとっ、……かえ…ろッ?」

仕事の電話が入ったと席を立った佑人を見つけて、腕を勢いよく掴んだ。

「お前、飲み過ぎ」
「……のまっ、…されたっん……だってばッ」

腰を支えられ、ふらつく体を預けるように意識を手放した。

< 8 / 177 >

この作品をシェア

pagetop