カマイユ~再会で彩る、初恋


先生のお宅のリビングで動画を観終わり、零時を回ったこともあって寝室へと移動した。

――――緊張する。

というより、やっぱり今夜、するのかな……。
まさか、お泊りする展開になるとは思ってもいなかったから、下着がいまいち質素すぎる。

婚活パーティーに勝負下着だなんて、着て行く理由がなかったし。
そもそも、外食して終わりかと思ってたから……。

どうしよう。
暗い部屋なら質素な下着でも大丈夫かな。

片付けしてる時に佳歩ちゃんにヘルプメールを送ったら、『どうせ脱ぐんだから、気にしてなくていいですよ』と返って来た。
そうかもしれないけれど。
言ってることは分かってるんだけど。
初めての時くらい、着飾っていたいじゃない。

『先輩、メールの内容が空振ってますよ?普通こういう時は、するかorしないかを聞くもんです!』
……その通りです。

する前提でメールを送った自分が恥ずかしい。

心のどこかで、先生とそういう関係を持ちたいと思う願望が少なからずあったのは確か。
例えそれが、お酒に酔って勢い余ってしてしまったとしても。
それくらいの既成事実がないと、先生との関係性はずっと平行線のままだと思うから。

どこにでもいる普通の恋人たちが羨ましく思えて。
近づくことさえも許されない人をずっと見るだけだったから。

「電気、真っ暗な方がいいか?」
「……どっちでも大丈夫です」
「じゃあ、常夜灯にしとくな」

真っ暗がいいと言えばよかったかな。
というよりも、静かすぎて心臓がもたない。

寝具の衣擦れの音とお互いの息遣い、それと空調の稼働音が妙に耳につく。

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