カマイユ~再会で彩る、初恋
「触れてもいいか?」
「っ……」
「嫌だったら、何もしないから」
「………ぃゃじゃ、なぃ…ですよ」
緊張しすぎて心臓が爆発しそう。
手触りのいい夏掛けの肌掛けに顔を埋めて、チラッと視線だけ先生の方に向ける。
すると、そぉ~っと先生の腕が頭の下に滑り込んで来た。
えぇ~っ、これって腕枕なんじゃ……?
ドックンドックン暴れている鼓動が、ドクドクドクドクッと物凄い速さで脈打つ。
救急車を呼ばないと危ないかもしれない。
未だかつてないほどに早鐘を打つ心臓に、自分自身でも驚くほど。
鼻腔を擽るベルガモットとレモンの絶妙なバランスの香り。
有名なブランドの代名詞とも言える香水で、十年前にこっそり買って部屋中に撒き散らしたっけ。
この香りを嗅ぐと、体中に幸せが充満するような感覚に陥る。
あの時からずっと、先生に恋してるから。
あっ……。
先生の鼓動も結構早い。
もしかして、先生も緊張してる?
ゆっくりと確かめるように顔を持ち上げると。
「バカっ、見んな」
「っっ」
空いてる方の手で顔を隠し、逸らしてしまった。
照れてる先生、めちゃくちゃかわいい。
クールな顔と憂い顔が私の中の先生のイメージだったけど、こんな風にあどけない先生も彼の顔なんだ。
優越感という嬉しさのあまり、ぎゅっと抱きついてしまった。
だって速すぎると思ったこの鼓動も、二人して同じような速さなら心地いい。
「茜」
あえて、なのかな。
最近、先生が名前呼びする。
連絡先を教えてくれて、デートに誘われ、家に呼んで貰えて、お泊りの許可も貰えた。
そして、キスまでしたってことは……その先を期待してもいいんですよね?