カマイユ~再会で彩る、初恋


フライトを終え、黒いキャリーケースを持った彼女が自宅へとやって来た。

「お疲れさま」
「これ、ソウルのお土産です」
「そんな気なんか遣わなくていいんだぞ」
「実は、私が食べたくて買って来たので」
「……そういうことか。どうぞ、上がって」
「お邪魔します」

エコバッグにぎっしりと詰め込まれたスナック菓子。
都内のスーパーなどで目にするものから、ちょっとマニアックと思われるものまで沢山買って来たようだ。

「これ、酒のつまみ?」
「それでもいいですし、小腹が空いた時にでもどうぞ」

まぁ、日持ちするものばかりだからいいか。

「シャワー浴びるよな?」
「お借りしてもいいですか?」
「もちろん」
「あ、それと、……洗濯機も借りていいですか?」
「ん、構わないよ」
「じゃあ、この中身そっくり置いて行きますね~」
「へ?」

彼女が言うにはフライトで持って行った荷物らしく、宿泊に必要最低限のものは入っているらしい。
CAの荷物なんて見たことないから、キャリーケースを開ける彼女を興味津々に隣りで見ていると。

「ちょっと先生、ガン見しすぎですっ」
「ダメなのか?……何が入ってるのか、興味があって」
「別に普通ですよ?一泊二日の旅行に持って行くような荷物ですから」
「そうなのか?」

開かれたキャリーの中は几帳面にパッキングされていて、小さめなポーチや圧縮タイプのジッパーポーチが収まっていた。

「このキャリーはフライト用なので、中身だけ置かせて下さい」
「じゃあ、何か入れるものか、場所があればいいわけだな?」
「……はい」

メイク道具などは洗面所に、着替えはクローゼットの一部を使うように指示を出した。

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