カマイユ~再会で彩る、初恋
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八月下旬のとある日。
六時出社で早朝の函館便を終え、タッチアンドゴー状態で同じ機種で羽田へと乗務し、すぐさま鹿児島便の往復をこなす。
夏休みは繁忙期で、運航する便が増えているからだ。
鹿児島便の業務報告書も作成し終え、客室センターで翌月の乗務スケジュールの再確認していると、
「あら、五十嵐さん、乗務上がり?」
「ッ?!岩瀬教官っ」
訓練後なのか、分厚いファイルを手にして客室センターに入って来た。
「なりきり企画を引き受けてくれて、ありがとう」
「いえ。岩瀬教官からのご推薦だと伺いました。本当に光栄です」
「そう言って貰えると嬉しいわ」
岩瀬教官は五十代半ばの熟練CAで、教官になって十五年ほど。
ご結婚されていて、双子の母親として仕事と家庭を両立している。
「本部長も、あなたのアナウンスは聴き心地がいいって褒めてたわ」
「えっ?!」
「当時の訓練生の中でもあなたの英語力は群を抜いていたし、当時も今も、アナウンスに関しては注意することがないもの」
「っ……」
アナウンスに関しては……。
CAの業務は他にも沢山ある。
アナウンスは花丸を貰えても、他の業務では及第点かもしれない。
「これからも精進します」
「あなたのそういう素直なところ、私は好きよ」
憧れの岩瀬教官から『好き』と言われただけで、嬉しくなる。
CAは臨機応変に状況判断しなければならないが、クレームも星の数ほどある。
だから、鈍感でなければならない。
些細なことに囚われすぎて、大事なことを見過ごしてしまわないように。
それらは、常に相手のことを受け入れ、流すことが要求される。
『素直』というのは、最上の誉め言葉だ。
八月下旬のとある日。
六時出社で早朝の函館便を終え、タッチアンドゴー状態で同じ機種で羽田へと乗務し、すぐさま鹿児島便の往復をこなす。
夏休みは繁忙期で、運航する便が増えているからだ。
鹿児島便の業務報告書も作成し終え、客室センターで翌月の乗務スケジュールの再確認していると、
「あら、五十嵐さん、乗務上がり?」
「ッ?!岩瀬教官っ」
訓練後なのか、分厚いファイルを手にして客室センターに入って来た。
「なりきり企画を引き受けてくれて、ありがとう」
「いえ。岩瀬教官からのご推薦だと伺いました。本当に光栄です」
「そう言って貰えると嬉しいわ」
岩瀬教官は五十代半ばの熟練CAで、教官になって十五年ほど。
ご結婚されていて、双子の母親として仕事と家庭を両立している。
「本部長も、あなたのアナウンスは聴き心地がいいって褒めてたわ」
「えっ?!」
「当時の訓練生の中でもあなたの英語力は群を抜いていたし、当時も今も、アナウンスに関しては注意することがないもの」
「っ……」
アナウンスに関しては……。
CAの業務は他にも沢山ある。
アナウンスは花丸を貰えても、他の業務では及第点かもしれない。
「これからも精進します」
「あなたのそういう素直なところ、私は好きよ」
憧れの岩瀬教官から『好き』と言われただけで、嬉しくなる。
CAは臨機応変に状況判断しなければならないが、クレームも星の数ほどある。
だから、鈍感でなければならない。
些細なことに囚われすぎて、大事なことを見過ごしてしまわないように。
それらは、常に相手のことを受け入れ、流すことが要求される。
『素直』というのは、最上の誉め言葉だ。