再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
それに、まだシャンパン1本も空になっていないのに酔うなんて……普段飲んでいない証拠。
彼はお酒でストレス発散するようなタイプではないのだ。


「西野さん……だよな?」

「莉乃です」

「莉乃ちゃん、今抜けられないの?」

「えっ……今は仕事中ですから」


まずい。これは相当酔っているかもしれない。

たまにいるんだよね、こういうお客様。
酔った勢いで誘い出してそのまま抱こうとする男性は数多い。

少し前にここを辞めた女の子も、そういう男性に引っかり妊娠してしまったのだ。


「じゃあ、終わるまで待ってる」

「それはダメです。遅くなるし、ご迷惑になるだけなので」

「夜遅いのは慣れてる」


あのクールなイメージの高森先輩とは打って変わって、やたらと攻めてくる彼。
そもそも、今日6年ぶりに再会したのだ。

そんなすぐに、親しい仲にはなれない。
それでもやぱり「学生時代の好きな人」という想いが捨てられず、迷っているというのも確かだ。


「……あ、あの。ちょっと話し相手になるくらいなら」


今すぐに抜けることはできない。今から常連客が次々に来るであろうし、これからが私の稼ぎ時。
でも、こんな風になっている先輩を放っておくわけにもいかなくて。

仕事を終えて、1時間くらいなら平気かもしれないと、ふと思ってしまった。
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