再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
こうして大金を落としてくれる人たちがいるからこそ、私は普段贅沢な暮らしができている。
だからどんなに愚痴し話さない常連客でも、これだけの大金を落としてくれているから無下に扱うことはできないのだ。


「あー、美味いね。やっぱり、仕事のあとの1杯は格別だなぁ」

「ふふっ、お疲れ様でした。最近は、お仕事どうですか?」

「そうだなぁ……最近の若者は、なかなか難しいよ。『ゆとり世代』だか『さとり世代』だか知らないけどなぁ。まったく、自由気ままだよ」


そう愚痴をこぼしながら、シャンパンを一気に喉へと送る中川さん。

たまに中川さんの愚痴は、私の胸の奥にチクリと針を刺されたような感覚になるときがある。
私が文房具開発の職場で働いていたときも、40代50代の先輩にこんな風に思われていたのかもしれないと思うと、どうも居心地が悪いのだ。


「相変わらず、大変そうですね」


軽く流しつつ、シャンパンを中川さんのグラスに注いでいく。


「どうだぁ? 柚葉ちゃん、俺の職場に来ないか? 超優遇してあげるよ」

「あはは、考えておきます」


自分の方へと肩を抱き寄せながら、私を自分の職場へ勧誘してくる中川さん。
毎回のことながらこんな調子で、正直言って迷惑。

私はここを辞めるつもりなんてないし、この『柚葉』という存在を求めてくれている人がいる以上、私はここで働いていたい。
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