再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
……やっぱり、本当の父親には敵わないだろうな。

4年の月日が流れているというのに、まだお互い好き同士なんだ。
俺がどうあがいても、3人の間に入るスキなんてないのだろう。

まさか付き合って間もなくして莉乃の相手が復縁を申し出てくるとは思ってもいなかったけれど、俺はここで身を引くのが正解なんだろうな……。


「莉乃、後悔するなよ?」

「……えっ?」

「俺は……莉乃に幸せになってもらいたいから」

「優太くん……」


俺の言葉を理解した様子の莉乃は、目にじんわりと涙を浮かべている。

本当はさ、俺も泣きたい。
でも、ついさっき『幸せになってもらいたい』と啖呵を切っておきながらここで泣いてしまったら、さすがに惨めだ。

莉乃が……俺が、初めて心から好きだと思えた女性が、幸せならそれでいい。


「ごめんね……ありがとう」


莉乃は、目に涙を浮かべたまま笑ってくれた。
俺は……莉乃にはこうして笑っていて欲しいから。


「これで莉乃が泣かされるようなら、次は強引にでも奪いに行くから」


俺はそう言うと、荷物を持って立ち上がった。
蒼斗くんを一目見てから帰ろうかとも思ったけれど、そうなると離れがたい。


「莉乃、幸せになって」


なにか言いたそうな莉乃に背を向けて、莉乃のアパートを去った。
莉乃が、次こそ幸せになれることを祈りながら。
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