再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
話したいこと……? そんなこと、言ってたっけ。
事前に聞いていたわけでもない私も、頭の中が「?」マークだ。

結婚することは話したし、ほかになにかあったかな?


「莉乃にも初めて話すけど。俺、クリニックを継ごうと思う」

「えっ?」


まったく想像もしていなかったことに、思わず間抜けな声を発してしまった。
突然の報告に、ご両親も目を丸くしながら蒼汰さんを見つめている。

それもそうだろう。
だって、再会したあの日ーー。

蒼汰さんは、クリニックを継ぎたくなさそうだったから。
今でも鮮明に覚えている、あのときの蒼汰さんの表情……。

理由は深く語らなかったけれど、これからもずっと大学病院で働くのだと思っていた。
きっと、クリニックを継ぐことはないって……。

全員が戸惑う中、口を開いたのはお父様。


「蒼汰。よく考えたのか?」

「はい。俺も、もう父親です。いつまでも、自分勝手な思いを貫くわけにはいかないと思いまして」


迷いがない蒼汰さんの眼差しは、真剣そのもの。
きっと、蒼汰さんなりによく考えて出した答えなのだろう。

自分が親になる立場になって、なにか心の変化があったのかもしれない。
私が、母親になる覚悟を決めたときのように。


「蒼汰、それは嬉しいことよ。でも、大学でもやりたいことがあったんでしょう?」
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