再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
「はい。でも、俺はもう充分やりたいことをやらせてもらいました。父さん、母さんのお陰です」

「蒼汰……」


蒼汰さんの熱い思いが届いたのか、お母様は目に涙を浮かべている。
お父様も感激している様子で、それを誤魔化すかのように熱いお茶を一口飲んだ。

私の話題になんて一切なっていないけれど、ただ聞いているだけの私も泣きそうだ。


「……嬉しいね。愛する息子が、そんな風に言ってくれるなんてね」

「本当……。蒼汰、ありがとうね。お母さんも……嬉しいわ」


感極まったお母様は、白いハンカチを目頭に当ててそう言った。

もう、全員がお寿司どころではない。


「それから、莉乃」

「は、はいっ!」


話の内容に感動していると、いきなり私の名前を呼ばれる。
慌てて背筋を伸ばして、蒼汰さんの方へ向く。

な、なに言われるんだろう。


「莉乃も、一緒にクリニックで働かないか?」

「え……私?」

「あぁ。クリニックの医療事務として、働いて欲しいんだ」


まさかの展開に頭がついていかず、目を大きく見開いたままなにも言えなくなった。

だって、蒼汰さんがそんな風に言ってくれるなんて思っていなかったから。
結婚してからは蒼汰さんの近くで仕事ができるなんて、そんな嬉しいことはない。

でも、ご両親は大丈夫なのだろうか。
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