再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
そんな風に色も味も様々な種類があるカクテルを高森先輩とゆったりとした雰囲気の中で味わうことが、最近の楽しみだった。


「お待たせ。今日もいつもので?」

「あぁ。ミモザと春雪で」

「了解」


まだほんの3回程度しか訪れていないけれど、店員さんにはすっかり顔を覚えられてしまったようだ。

しばらくしてからそれぞれのカクテルがカウンターに置かれ「乾杯」と言いながらお互いのカクテルグラスを傾けた。
一口だけ口にすると、カクテルのフルーティーな味が喉を通っていく。

今日は常連客が多くて高級なシャンパンをいつもより多く飲んだため、喉が熱い。


「はぁ……やっぱりいいな。美味い」


ため息交じりにそう言った高森先輩の顔は、なんだか疲れているように見えた。

毎日の忙しさに加えて、また両親に結婚の催促でもされたのだろうか。


「お疲れですね」

「あぁ、そうだな。最近、開業医からの紹介患者が多くて」

「そうでしたか……」


高森先輩が勤務しているという病院は、『中塚総合病院』という大きな総合病院。

医院長の中塚ドクターは世界的に有名な脳外科医らしく、ここの病院に勤務しているドクターはすべて腕がいいと、様々な病院からの紹介患者が受診に来るらしい。

私は基本的に病院とは無縁で受診する機会はないけれど、中塚総合病院の存在くらいは知っていた。
< 23 / 170 >

この作品をシェア

pagetop