再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
スマホを確認すると、時刻はまだ20時10分。
開店は21時だというのにも関わらず、11月の寒空の下こうして待っていてくれているのか……。

私の出勤を楽しみにしてくれている人がいるのに、辞めることを強いられているのは少し辛い。
それでも、今後の生活の保障はあるはずだから。

だからこそ、引き下がれないという思いもあることには間違いないのだ。


「それで莉乃、なにかあったの?」

「え!? どうして?」

「いつも時間ギリギリにしか出勤しない莉乃が、こんなに早く出勤するなんて珍しいじゃない」

「ゔ……そ、それは……」


さすがはめぐみさんだ。
言われたことが図星で、言葉に詰まらせながら目を泳がせた。

スカイブルー色のロングドレスに着替えためぐみさんは、不思議そうに私の顔を見つめてくる。


「じ、実は……」


やっとの思いで絞り出した声は、喉に引っかかって少し(かす)れてしまった。
それでもなんとか話の続きをめぐみさんに伝えて、来月でお店を退職しなければならないこともすべて話す。

当然、目を丸くしながら私の話を聞いていためぐみさんは「ねぇ、聞いてる?」という私の問いかけで我に返ったようだ。


「莉乃、騙されてないよね?」

「う、うん。相手はドクターだし、お父様にも会いに行くし……」
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