再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
まさか。あの真面目なイメージだった彼女ーー莉乃が。
こんなところで、いったいなにをしているんだ?

いや。働いていることには間違いないのだが……どうしてこんなところで働く必要がある?


「それよりさぁ……」

「どうかしましたか?」


莉乃の方は気が付いていないのか、俺の問いかけにきょとんとしている様子だ。
これはもう、単刀直入に聞いてみるしかない。


「お前、こんなところでなにしてんの?」


突然の質問に驚いたのか、莉乃の手元がビクッと反応し、注いでいたシャンパンが少しこぼれた。

近くにあったおしぼりでこぼれたシャンパンを拭いて、莉乃は俺を見つめる。


「え……え、っと?」

「お前、高校のときバスケ部だったろ?」

「あっ……」


なにか思い出したのか、口に手を当てて過去の記憶を辿っているようにも見える莉乃。


「覚えてないの?」

「え……いや、その……ところどころしか思い出せないというか」


まぁ、それもそうかもしれない。
当時の俺は彼女がいたし、ほかの子と関わるようなことはしなかった。

高校生ながらに当時の彼女のことは大切にしていたつもりだったし、まさか……浮気されるなんてことはないと思っていた。
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