再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む

引っ越しの日

高森先輩に結婚の話を持ち出されてから、あっという間に話は進んでいった。

12月下旬の高森クリニックが休診のある日。
ふわふわの高級ブランドコートに身を包んだ私は、緊張でガチガチだった。


「莉乃、そんなに緊張しなくてもいい」

「はい……でも、お父様にお会いするとなるとさすがに」


朝9時。仕事を終えてシャワーを浴びた私は、最近購入した紺色のワンピースを身に纏い、高森先輩が運転する車に乗り込んだ。

今日は、高森先輩のお父様ーー高森医院長に、結婚のご報告に行く。
またしても洋服の持ち合わせがなかった私は、今日までにファッションサイトでこの紺色のワンピースを購入。

今まで大きく胸元が空いたようなドレスしか着たことがなかった私にとってロング丈のワンピースは違和感しかなかったけれど、さすがに派手なドレスを着ていくわけにはいかない。


「莉乃が緊張すると、俺まで緊張するから」


ハンドルを握ったままそう言った高森先輩も、今日は紺色のスーツを完璧に着こなしていた。

当たり前だけれど高校時代の学生服を着ていたころとは全然雰囲気が違っていて、本当にかっこいい。


「あ……あの、お母さまもいらっしゃるんですよね?」

「母は今海外旅行中らしいよ。大学時代一緒に働いていたナース仲間と、パリに行ってる」
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