再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
「え、パリ……」

「そう。クリニックの外来日は長期休暇がないから。年末に、よく出かけるみたいなんだ」


そりゃそうか……。年末年始の長期休暇のときくらいしか、出かける時間がないんだ。

海外旅行、というところ辺りが、医院長の奥様らしい。
私が今の職場に就いて大金を手にしても、海外旅行へ行こうという思考にはならなかった。

もともと海外に興味がないし、行ってみたいと思うところもありきたりなハワイとかだけだし。


「俺たちも行こうか? 新婚旅行に、ハワイとか」

「は?」


一瞬、心を読まれたのかと思ってしまうくらい、ベストタイミングでの提案。
驚いて、間抜けな声を出してしまった。

ノリで頷いてしまいそうになったけれど、よくよく考えてみれば私たちの結婚はあくまでも偽りの結婚。
将来的に離婚するのだから、新婚旅行なんてものは必要ないのでは……?

そう言いかけて、私は生唾とともに言葉をゴクリと飲み込んだ。


「あ……それは。まぁ……そのうち、で」

「そう? まぁ、いつでも行けるしいいか」


『いつでも』という先輩の言葉に、私は驚いて先輩の顔を見つめた。

そのうち離婚するはずなのに『いつでも』だなんて言葉を使うのは変じゃない?
高森先輩は頭がいいから、簡単にそういうことは言わないはず。
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