再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
でも、これはあくまでも政略結婚。
いずれは離婚することになるだろうから、この結婚に未来はない。


「いやぁ……孫の顔を見るのが楽しみだよ。莉乃さん、あまり身体に負担をかけないようにね」

「え……あ、はい。気を付けます……」


「まだ長生きしないとね」と、上機嫌のお父様。
それに対して私は苦笑いするしかない状況だったけれど、無事結婚の挨拶は終了。

その後は、松林さんが運んで来てくれたお茶菓子をごちそうになった。
昼食も一緒にどうかと誘われたけれど、今日はまた出勤に備えて仮眠を取らなければならない。

もう少しで、Tiaraも退職だ。
辞めるまで、できる限り出勤しておきたい。


「では、失礼します」

「あ……ありがとうございました」


ペコリとお辞儀をして席を立つ。
それと同時に松林さんが襖を開けてくれ、お父様にお見送りされながらクリニックをあとにした。

車に乗り込んだ瞬間疲れが押し寄せ、「はぁあ」と思わず大きなため息を漏らしてしまう。


「疲れた?」

「かなり疲れました。それより、どうしてあんな嘘を?」

「嘘って、なにが嘘なんだ?」


私が質問したのに、なぜか質問で返されてしまった。
お父様の前であんな大嘘をついておいて、とぼけているのだろうか。


「私が医療事務をしているってことです。バレたらどうするんですか?」
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