再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
「嘘じゃない。今から勉強して資格を取ればいい」


ハンドルを握ったまま涼しい顔をでそう言った高森先輩。

資格取得……? これから、私が資格取得しろっていうの?
いくらなんでも、無茶苦茶すぎない?


「そうすれば、嘘でもなんでもなくなる」

「そんな……」


勉強することは嫌いじゃない。
高森先輩と同じ高校に通っていたくらいなのだから、学力に自信がないわけではない。成績もそこそこ上位にいたし、頭は悪い方でないと思う。

かといって、これから資格取得のために勉強しろって……勝手なのもいいところだ。


「待ってください。私、結婚はいいっていいましたけど、そこまでは……」

「莉乃は俺の妻になるんだろ?」


そんな風に言われてしまっては、もうなにも言い返すことができない。

政略結婚を承諾したのも私だし、結婚の報告をしたのだから後戻りもできない。
自分で決めたことなのだから、もうやるしか選択肢はないのだ。


「わかりました。やります」

「さすが莉乃だ。バスケ部時代の、負けるもんか精神だな」


そう言った高森先輩は白い歯を見せてにっこりと笑いながら、私の頭を撫でてくれる。
その行動にドキッとした私は、恥ずかしくなって窓の外を眺めた。

なんとなくズルいような気もしたけれど、これから先輩との生活が始まろうとしているのだ。
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