再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
男性と一緒に生活したことなんてないけれど、ヘマをしないようにしなければ。


「それじゃあ、また連絡する。引っ越しの準備、少しずつ進めておいて」


私のアパートの前に車を停めると、私の手を握ってそう言った高森先輩。

あ……そうか。結婚するということは、もうここには住まないってことなんだ。
古いけど長年住んできたアパートだったから、少し寂しい気もする。


「はい……わかりました」

「それじゃあ、また」


そう言いながら、高森先輩は私のおでこに優しくキスを落とした。
不意打ちのキスに、顔が熱くなる。

恥ずかしさと胸の高鳴りを隠すかのように車を降りると「それじゃあ」とだけ伝えて、アパートの階段を駆け上がった。
ドアを閉めてその場にへたり込むと、胸にそっと手を当てる。

な……さっきのキスはいったいなに!?
愛がない相手にでも、あんな風にキスできるものなのかな?

あんなことくらいでドキドキするなんてまるで中学生みたいだけれど、高森先輩があんな行動を取るだなんて思っていなかった……。


「はっ……いけない。今日も出勤なんだ」


ふと我に返る。
ドキドキが落ち着かないけれど、出勤のために仮眠を取らなければいけない。

着慣れない紺色のワンピース脱いでクローゼットへしまうと、スウェットに着替えてベッドに潜り込んだ。
< 56 / 170 >

この作品をシェア

pagetop