再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
* * *

それからしばらくした年明けのある日。

冬だというのにも関わらずあたたかな日差しが降り注ぐ今日は、まるで私たちの新たなる門出をお祝いしてくれているようにも思える。


お父様に結婚のご挨拶に行ってから、私はすぐに引っ越しの支度を始めた。
今まで使ってきた衣装はすべて衣装ケースにしまい、ブランド物のバッグやヒールの高いパンプスはすべて段ボール箱に詰め込んだ。

クローゼットの中は、想像以上にごちゃごちゃ。
でも、捨てれない物もたくさんある。

キャバクラをプロデュースした元・人気モデルからプレゼントしてもらったブランドネックレスもあったし、お客様から誕生日のプレゼントとして頂いたブランドバッグもあった。

それらすべてを詰め込んだ段ボール箱は一足先に高森先輩のマンションに運び込まれていて、あとは自身の身体のみ。


「……やっぱり、寂しいな」


空になったアパートの部屋を眺めていると、色々なことが蘇ってくる。

お金がなくて困っていたときからずっと、このアパートに住んでいた私。
決して綺麗とは言えなかったけれど、それなりに気に入っていた。

夜の世界に入り込みお金には困らなくなったものの、引っ越しをしようなんてことは思わなかったんだから。
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