再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
高校時代は、もちろん『高森先輩』と呼んでいたし。
それが定着してしまっていて、急に呼び方を変えるのは難しい。


「徐々に……ではダメですか?」

「ダメ。ほら、呼んでみて」


先輩の要求に、小さく「蒼汰、さん」と呟いた。
ドキドキと心臓がうるさくて、先輩に聞こえているのではないかと心配になってしまう。

恐る恐る先輩の顔を見てみると、ハンドルを握って真っ直ぐ前を見ながらも、嬉しそうな表情を浮かべていた。


「なんか、いいな。夫婦っぽい」

「いや、まだ入籍してませんから」


私の突っ込みに「あ、そうだった」と、白い歯を覗かせながら笑う蒼汰さん。
さっきまでのドキドキはもうないけれど、名前で呼ばれたことがそんなに嬉しかったのかと不思議な気持だ。

そんな会話を交わしながら車はマンションの駐車場へと滑り込み、決められている駐車スペースへと丁寧に車を駐車させる蒼汰さん。


「着いたよ」


車のエンジンを止めて運転席を降りた蒼汰さんは、すぐに助手席側へと回ってドアを開けてくれた。
当然のように差し出された手は、どうやら私が握り返すのを待っている。

こんな風にエスコートされるなんて、初めてのことだ。
さっきとは違う胸の高鳴り。

ドキドキしながらもそっと蒼汰さんの手を握り、ゆっくりと車を降りる。


「足元、気を付けて」
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