再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
このマンションからはそう遠くはないけれど、明らかに目立つ大学病院。
あんな大きな病院で勤務していたら、蒼汰さんに好意を寄せる女性はたくさんいるに違いない。

政略結婚の相手はわたしでなくてもよかったのでは?と、ふと思ってしまったけれど、ちょうど24階にエレベーターが到着したことを知らせ、頭を振ってその思いをかき消した。

エレベーターを降りて、部屋を探す。


「広っ!」


ついさっきも、同じ言葉を発したような。でも、もうそれしかいう事がないくらい広い。

なんとか部屋を見つけ出してドアにカードキーをかざすと、赤から緑のランプが点灯し、開錠されたことが知らされた。
そーっと中を覗き込みながら、部屋に入る。


「えぇ……」


玄関の床は、きれいなタイル張り。リビングへと続く廊下の幅は広く、艶がある。
ドアの向こうに見えるリビングはおそらく12畳ほどで、そのほかにも部屋が3部屋あるようだった。

履いてきたニーハイブーツをきれいに並べて中に入ると、大きな窓からは先ほどエレベーターから見えた景色とはまた違った景色が一望できるようになっている。

……こんな広い部屋に、今まで蒼汰さん1人で住んでいたの?
私はあの古いアパートのワンルームで生活していたというのに。

それにこれからこんなに広くてきれいな部屋に、2人で暮らしていくのだ。
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