再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
リピーターさんである中川さんになら余裕で「ソウメイ」というシャンパンをおねだりするんだけれど。
低価格のシャンパンをオーダーするなら、ヴーヴ クリコのホワイトをおねだりするのに限る。


「なんでもいいよ。とりあえずおすすめで」

「じゃあ、ヴーヴ クリコのホワイトをオーダーしますね」


右手を挙げて田端くんを席へ呼ぶと、さっそくシャンパンをオーダー。
しばらくすると席に冷えたシャンパンが運ばれてきて、私は「それじゃあ、開けまーす」と言ってから栓を抜いた。

「ポンッ」という軽快な音とともに、ふわりと漂うシャンパンの甘い香り。
初めは上手く開けることができなかったシャンパンの栓でさえ、今は余裕だ。


「はい、どうぞ。乾杯しましょ」

「……あぁ、どうも」


シャンパングラスに注いだ液体が、店内のライトに照らされてキラキラと輝いている。カチン、とグラスを斜めにして乾杯を済ませると、私は喉にシャンパンを流し込んだ。

それにしても、どうも初対面だとは思えない彼。
思い出せそうで思い出せない嫌な感じが、胸の辺りでつっかえて取れない。


「あ、やっぱ美味し。美味しいでしょ?」

「俺には少し甘いかもしれない」

「そうでしたかぁ。まぁ、また色々オーダーしましょうよ」
< 8 / 170 >

この作品をシェア

pagetop