再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
高血圧と高脂血症で長年通院しているという大角さんはもうこの関原クリニックの診察システムをもご存じなようで、事細かく説明をする必要がない患者さんだ。

診察券を出し終えた後は、必ず決まった椅子に腰かけて備え付けの料理本を見るのが大角さんのルーティンだ。
2年も務めれば、定期受診に来る患者さんの特徴も覚えてしまう。

それは接客業特有。夜の仕事をしていたときと、変わらない。


「おはようございます。あの、初めてなんですけど……」


大角さんの受付が終わってすぐ、初診の受付をしたのは40代くらいの女性。
ぱっと見た感じ、体調が良くなさそうだ。

この寒さと今流行中の感染病で、発熱での受診は増加傾向にある。


「今日はどうされましたか?」

「昨日から少し熱っぽくて」

「わかりました。体温測ってもらって、問診票も記入して待っていてくださいね」


説明しながらバインダーに問診票を挟んで、ボールペンと一緒に患者さんに手渡した。
それを受け取った患者さんはゆっくりと歩きながら待合室の椅子に座り、問診票に記入を始める。

それに続いて定期受診の患者さんや発熱、初期の風邪症状を訴える患者さんが受付を済ませ、受付開始から1時間もしないうちに待合室はほぼ満席になってしまった。
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